教育行政執行方針


 平成十四年第一回登別市議会定例会にあたりまして、教育委員会の行政執行方針と重点事項について申し上げ、市議会議員並びに市民の皆さんの御理解と御協力をいただきたいと思います。

 我が国の教育は、能力、適性、意欲に応じて平等に教育の機会が保障されるべきという「教育の機会均等の実現」を基本理念として掲げ、教育を重んじる国民性とあいまって我が国の発展の原動力となってきたところであります。
 その一方で、少子化や核家族化、都市化の進展とともに、これまで子どもたちに対人関係のルールを教え、自己規律や共同の精神を育み、伝統文化を伝えるといった役割を担ってきた家庭や地域社会の「教育力」の著しい低下や児童生徒の多様な能力・適性などに十分に対応出来ない画一した学校教育などが、「いじめ」や「不登校」、青少年の非行問題の深刻化などの様々な問題が生じる背景となっているのが現状であります。
 昨年十一月、文部科学省では、社会の存立基盤である教育について、その振興と改革を着実に推進していくため、教育振興基本計画の策定と教育基本法の在り方について中央教育審議会に諮問したところであります。
 また、「二十一世紀教育新生プラン」に基づき国民の学校教育への信頼を取り戻し、「学校が良くなる、教育が変わる」ことが実感できるような教育改革が引き続き推進されているところであります。
 本年四月から、完全学校週五日制の下で全面実施となる新学習指導要領では、「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し、子どもたちの豊かな人間性や基礎・基本を身に付け、自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育成することを基本的なねらいとして、これまでの知識偏重の教育ではなく、自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などまでを含めて「学力」ととらえるものでありますので、教育委員会としても各学校の教育課程の編成を支援するとともに、趣旨を十分に踏まえ、教育の求める今日的課題に適切に対応し、心豊かでたくましい人間性を育む「登別らしい教育」の推進に努めてまいる所存であります。
 本年四月にオープンする自然体験宿泊施設「ネイチャーセンター」を拠点とする自然体験学習やコンピュータ機器の整備に伴う情報教育、さらには、ボランティア活動の実践など地域に根差した特色ある学校教育活動が推進されるよう支援してまいります。
 また、少子化現象の中、中卒者の急激な減少から、公立高等学校適正配置計画の狭間にあって、大幅な定員割れに悩む市内私立高等学校に対して、これまでも建学精神に基づき全道的にも特色ある教育活動を展開しておりますので、なお一層この教育活動が推進されるよう支援してまいります。
 また、小中学校間におけるコンピュータのネットワーク化が終了したことから、教育委員会内に「教育情報センター」を設置し、情報教育が円滑に進められるよう努めてまいります。
 教育委員会といたしましては、今後とも、国の教育施策を十分に見極めながら、「登別市総合計画」を基本とし、「豊かな個性と人間性を育むまちづくり」の実現を目指すとともに、教育の諸課題に適切に対処し、諸般の施策を推進してまいります。                                                    

 はじめに、学校教育について申し上げます。
 これからの学校教育においては、地域や子どもたちの実態に応じ、子どもたちが「主体的・自律的」に「生きる力」を備える教育が求められております。
 このため、各学校においては、創意ある教育課程を編成し、地域や学校の実態に基づく特色ある学校づくりに努めていくことが大切であります。
 このようなことから、各学校が移行措置として取り組んできた「総合的な学習の時間」は、父母や地域社会との連携の中で、大きな成果を得ることができましたので、完全実施となる本年度は、さらに内容を充実し実施されるよう支援してまいります。
 また、学校が開かれた存在として質的な転換を図るためには、直接、教育指導にあたる教職員に負うところが大きいことから、教職員自らがその使命と責任を自覚し、専門性を高める研究・研修活動に積極的に取り組めるよう条件整備に努めているところであります。
 本年度は、文部科学省、胆振教育局、胆振教育研究所、登別市の研究指定校など、継続六校、新規四校が指定を受けておりますので、各学校の研究・研修活動が一層進められるよう支援してまいります。
 学校週五日制については、各中学校区「子ども地域交流プラザ」の中で展開されてきた体験活動や奉仕活動などの特色ある活動が、多大の成果を収めてきましたので、今後とも、この取り組みについて積極的に支援をしてまいります。
 生徒指導についてでありますが、
 今日、幼児・児童・生徒を取り巻く生活環境が著しく変化する中で、「いじめ」、「不登校」や暴力行為、薬物乱用、幼児虐待などの問題行動が顕在化し、子どもの心の健康が大きな社会問題として受け止められております。
 これに対応して、学校・家庭・地域社会が連携を深め、一体となった取り組みを推進し、子どもたちに「ゆとり」のある生活を営ませる中で、たくましく生きる力を育んでいくことが大切であります。
 各学校においては、生徒指導の基本にたって、適切な児童生徒理解に裏打ちされた信頼関係の醸成に努めるとともに、校内の生徒指導体制を確立し、教師が毅然とした態度で、しかも、受容と共感という指導姿勢をもって対処することが重要であります。
 教育委員会としては、今後一層、学校、関係機関、各種団体等との連携を密にし指導の徹底が図られるよう努めてまいります。
 特に、今日まで取り組んできた「いじめ」や「不登校」への対応については、引き続き各種の施策を継続するとともに、家庭向け啓発資料の配布、専門職員による電話相談、来室相談、家庭・学校訪問等を引き続き実施してまいります。
 また、生徒指導担当教諭や「スクールカウンセラー」、「心の教室相談員」についても引き続き配置してまいります。
 また、「入浴体験学習」、「外国青年招致事業」、「中学生海外派遣事業」並びに「白石市との交流事業」等は引き続き実施することといたします。
 小中学校へのコンピュータ導入について、本市では、高度情報通信社会の進展に対応し、児童生徒が様々な情報を主体的に選択し、すべての学習活動において、適切かつ積極的に活用することが出来る能力の育成を図るため、全面的なコンピュータのネットワーク化を進めてきたところであります。
 これまでも、指導にあたる教職員を先進地に派遣し、授業に活用出来る仕組みや方法などの調査研究に努めてまいりましたが、今後も、「すべての教員」がコンピュータを授業に生かし、活用できるよう支援してまいります。
 学校図書館については、
 児童生徒が、読書に親しみ日常生活に潤いと創造性を高めることは極めて大切なことでありますので、活用の仕方について、学校やPTAとも連携を深め、読書活動の啓発を図ってまいります。
 健康・安全指導についてでありますが、
 外部からの危機に対する子どもの安全及び日常の安全管理については、来訪者の確認、関係機関との連携、登下校時の安全確保や緊急時の連絡体制などの危機管理マニュアルを作成するとともに、携帯用非常ベルや非常ベルの設置など有効と考えられる対応に取り組んできたところであります。
 今後とも、地震、火災、自然災害、食中毒等、校舎内外の安全点検について、これまで以上に配慮するとともに、学校は子どもが安心して生活し、教師と子どもが励まし合い認め合う温かい営みの中で、生き生きと学習し楽しく過ごすことが出来る安全な場所となるよう環境整備に努めてまいります。
 幼稚園教育については、
 発達段階にふさわしい幼児期の体験は、豊かな心情や感性を身につける上で大切なことでありますので、きめ細かな対応ができる教育課程の編成・実施に努めてまいります。
 市立幼稚園の廃園については、市内における幼稚園教育の安定確保を図るため引き続き「幼稚園教育は民間に委ねる」ことを基本方針とし、若草幼稚園は、平成十五年三月末、登別温泉幼稚園と富士幼稚園については平成十七年三月末をもって、それぞれ廃園することとしております。
 また、幼稚園と保育所の連携あるいは幼稚園・保育所と小学校の連携、幼稚園における子育て支援機能の充実等に努めるとともに、市立・私立幼稚園入園の五歳児を対象に小学校入学前の学校給食指導を実施いたします。
 また、私立幼稚園協会が教職員の資質の向上を図るため実施する研修会に支援するとともに、私立幼稚園が教育内容の充実を図るための教材教具等の購入に対し支援してまいります。
 学校給食については、
 多様化する児童生徒の嗜好に配慮しながら栄養のバランスを確保し、かつ、安全で信頼される楽しい給食にするよう、一層努めてまいります。
 施設整備については、
 市内の小中学校は、いずれも老朽化の課題を抱えておりますが、今後とも、授業に支障のないよう整備してまいります。
 本年度は、若草小学校の大規模改造にかかる実施設計を行います。

 次に、社会教育について申し上げます。
 社会教育が果たしてきた大きな役割をさらに充実発展させ、進展している生涯学習社会の実現を目指し、今日的課題や社会の変化に即した多様なニーズに対応した学習機会の拡充に努めるとともに、行政・地域・企業等の連携・協力に努めてまいります。
 また、市民一人ひとりの学習を支援するため作成する、「生涯学習人材バンクハンドブック」については、その有効活用に努めてまいります。
 老人大学及び婦人短期大学については、学び得た知識や豊かな体験が地域や世代間交流等で生かされていることから、今後とも、学習者のニーズを適確に把握し、その充実を図ってまいります。
 家庭教育についてでありますが、
 家庭での教育は、基本的な生活習慣や生活能力、自制心や自立心、豊かな情操、他人に対する思いやり、善悪の判断などの基本的倫理観、社会的マナーなどの基礎を育むものであり、学校や地域社会での活動にも影響を与えるすべての教育の出発点であります。
 このことから、「家庭教育手帳」や「家庭教育ノート」、「家庭教育ビデオ」の啓発資料を有効に活用し、積極的に家庭における教育力の充実を図ってまいります。
 青少年教育については、
 青少年が明るく健やかに育つためには、青少年の成長過程に応じて、家庭・学校・地域社会がそれぞれの教育機能を発揮し、相互の連携を深めながら一体となった取り組みが必要でありますので、文化・スポーツなど多様な体験活動やボランティア活動等を中心とした社会参加活動等の学習機会の拡充に努めるとともに、家庭・学校・地域社会・関係機関等との連携を一層密にし、適切な情報交流を図り、適時・適切な対策を講じ、青少年の健全育成に努めてまいります。
 図書館については、
 これまで取り組んできたコンピュータによる図書館システムが確立いたしましたので、今後は貸し出し、返却等について迅速に対応してまいります。
 また、インターネットによる情報提供についても積極的に取り組んでまいります。
 社会教育施設については、
 ネイチャーセンターは、これまで市民や議会、専門的な立場の方々の意見をお聞きしながら、「子ども自然教室」や「自然観察会」など様々な体験プログラムを作成し、開設に向けた準備に取り組んでまいりました。
 四月からは、指導にあたる専門員や専任の職員を配置し、当該施設が有効に利用されるよう努めてまいります。
 文化・スポーツの振興については
 登別市文化・スポーツ振興財団や文化協会、体育協会をはじめ、関係団体との連携を深め、市民に親しまれる事業を実施して、地域文化の振興とスポーツの振興に努めてまいります。
 市民プールの建替えについては、「新市民プール建設検討委員会」やアンケート調査の結果を基に、健康づくりやリラクゼーションといった複合的な機能を有し、幼児から高齢者、障害者までの幅広いニーズに対応した機能を備えた施設となるよう調査研究を進めてまいりましたが、さらに、幅広い意見をお聞きして計画を取りまとめてまいります。

 以上、平成十四年度の執行方針並びに重点事項について申し上げましたが、これからも、市民が生涯にわたって、豊かで活力ある生活を送ることが出来るよう、市長部局との連携を深め、諸施策を推進してまいります。
 市議会議員並びに市民の皆さんの御理解と御協力をお願い申し上げます。

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