教育行政執行方針


 平成十五年第一回登別市議会定例会にあたり、教育委員会所管の行政執行に関する主な方針について申し上げます。

 教育改革元年とも言われた平成十四年度、教育界は、大きな改革のうねりの中で様々な課題に直面いたしました。

 学校週五日制の完全実施、新しい学習指導要領の施行に伴う多様な教育活動のあり方、中央教育審議会における教育基本法の見直しや全国市長会における分権型教育行政のあり方、さらには、構造改革特区の提案に見られる、これまでの枠を超えた弾力的な教育の展開など、教育の根幹のみならず、現行日本の教育体系において地殻変動とも言える改革の動きが、進められようとしております。

教育委員会といたしましては、これら教育を取り巻く情勢の変化や改革の動向をしっかりと受け止めるとともに、明らかになった課題をひとつひとつ確かめながら、本年は、登別の教育の将来的な展望確立のための研究を深める年にしたいと考えております。
とりわけ、分権型教育の推進にあたって避けて通ることのできない学区制の問題や小中連携を踏まえた六・三制の検証、あるいは二学期制の課題等については、市教育研究会や校長会・教頭会と連携して研究を深めてまいります。
また、同時に、子ども一人ひとりに応じたきめ細かな教育の展開や体験的学習、課題解決的学習などへの取り組み等各学校における教育課程の編成と展開を支援するため、教育委員会指導室の態勢を強化することといたしました。

本年度の主な取り組みについて申し上げます。

学校教育についてでありますが、
完全学校週五日制のもと新しい学習指導要領が施行されたことは、これまでの知識偏重と言われた教育から「生きる力」の育成を目指し、基礎・基本を大切にした総合的な人間形成の場としての教育へと大きな一歩を踏み出したものと理解しております。
また、学校週五日制は、地域での人材育成に向けた学校・地域・家庭の連携の重要性とともに、それぞれが等しく人材育成を担うという新たな時代の始まりと受け止めております。
当市におきましては、幸いなことに、各中学校区「こども地域交流プラザ」や各地区「子供をまもる会」等の活動、PTA、おやじの会の取り組み、さらには、市内の各団体が連携する「ふるさと広場実行委員会」の活動など、情熱をもって子供たちと関わりながら育成に尽力されている多くの市民の皆さんがいます。
これらの多彩な取り組みは、地域における教育力の低下が懸念される中にあって、登別ならではの市民力の発現として貴重な取り組みと認識しております。
活動を担い、支えて下さっている皆さんに心より感謝申し上げますとともに、これらの取り組みがより一層有機的に機能するよう、各学校における積極的な情報提供を促してまいります。

また、「開かれた学校づくり」は、学校が地域の皆さんに信頼され、共に子供の育成を担う協力者としての関係を確立するための不可欠な取り組みであります。
これまでの学校評議員の活用に加え、外部評価も視野に入れた学校評価制度構築に向けた取り組みを促すとともに、保護者や地域の皆さんに向けた情報誌の発行を支援してまいります。
また、「教育情報センター」を拠点に各学校のホームページによる情報発信機能を高めてまいります。

教職員の資質向上についてでありますが、教育の成否は、その直接的な担い手として日々子供に接し、その人格形成に大きな影響を与えている教員の資質に負うところが大であり、新学習指導要領のもと、教員には、これまで以上の指導力の向上が求められております。
教職員が子供にとって魅力のある、そして教育専門職としての力量に富んだ存在であるよう、本年も引き続き北海道教育委員会、北海道教育研究所等で実施される研修に積極的に派遣するとともに、自主的・主体的な研修・研究などを奨励・支援し、一層の教職員の資質向上に努めてまいります。

特色ある教育の推進につきましては、各学校が地域の多様な教育資源を生かすとともに、創意に満ちた教育課程の編成と展開を図ることができるよう支援してまいります。
また、選択履修幅の拡大や複数教師によるきめ細かな教育活動を展開できるよう、学校の実態に即した少人数加配制度を活用してまいります。

また、昨年から中学校の学習指導要領に位置付けられた和楽器につきましては、日本古来の文化に触れ、豊かな心を養う学習活動として重要でありますので、不足している和楽器の整備に取り組むとともに、「邦楽になれ親しむモデル事業」を展開してまいります。

学校図書館についてでありますが、児童生徒の読書離れが懸念される中、今年度より十二学級以上の学校に司書教諭が配置されることとなりました。
児童生徒が、主体的に情報を収集・選択し、活用する能力を身に付けるためには、情報教育の充実とともに、学校図書館の機能の拡充が不可欠であります。
このため、司書教諭が十分に活動できるよう、その基盤作りを目指し、国の緊急地域雇用対策事業を活用し各小学校に司書有資格者などを配置することといたします。

学校の情報化推進につきましては、拠点となる市教育情報センターの態勢の強化を図るとともに、引き続き児童生徒、教職員に対するコンピュータ機器の整備をすすめます。
また、IT活用能力の向上を図るため、民間団体と連携して遠隔地授業やテレビ会議の仕組みについて共同研究をすすめます。

登別温泉中学校の統合についてでありますが、今後とも同地区の生徒数の増加が見込めないことから、適正な規模での学校教育をすすめるため、地域や保護者の皆さんと話し合いを行い、平成十六年度から登別中学校に統合することで了承をいただいたところであります。
 今後、統合するにあたり、通学方法や同校の特色ある教育活動の継承、生徒間の事前交流などの課題解決に取り組んでまいります。

幼児教育についてでありますが、
「年齢」や「保育に欠ける」要件などで子どもの育成の場が区分されている現下の課題解決に向け、市長部局と連携しながら、これまでの幼稚園・保育所という垣根を乗り越えて、それぞれが強い連携と可能な分野からの融合を図る「登別地区幼保一元化モデル事業」をすすめてまいります。
また、登別市における今後の幼児教育の充実と創意ある取り組みを進めるため、幼児教育専門家や保護者、関係機関と連携して、「幼児教育の振興に関するプログラム」を策定します。

学校施設整備についてでありますが、懸案であった若草小学校の大規模改造及び耐震補強の第一期工事に取り掛かかることとしております。
また、鷲別小学校の水洗化、登別小学校の廊下補修とグラウンド整備、富岸小学校の暖房設備と受水槽の改修などの施設整備に努めます。
 
次は、社会教育についてであります。

二十一世紀に入り、ますます進行する高度情報化や少子・高齢化、社会の成熟化等の潮流のなかで、人々は、生涯にわたって「健やか」でいきいきと充実した人生をおくることのできる暮らしを求めております。
それは、単に物質的な豊かさや利便性の追求だけではなく、ゆっくりとした時間の流れの中で「家族の絆」や「人と人のふれあい」を大切にする暮らし、「自然と調和した中で自らの心と体の健康を大切にする」暮らし、あるいは、「芸術や文化に触れるとともに、自らその創造に取り組もうとする活動」などとして現れております。

教育委員会といたしましては、これら市民の新しい暮らしから生れる様々な願いを受け止めるとともに、市民それぞれに合った学習ができるよう生涯学習社会の構築に取り組んでまいります。
また、「生涯学習人材ハンドブック」の活用や様々な媒体を活用した生涯学習情報の充実に努めるとともに、「マイプラン講座」や「ときめき大学」「婦人短期大学」「家庭教育学級」など市民が自ら主体的に学ぶことのできる機会の拡充に努めてまいります。

文化とスポーツの振興についてでありますが、
市民憲章で謳う「文化の薫り高いまち」の実現に向け、市内で展開されている文化活動がより太い流れとなることを期して、文化振興の指標となる「登別市文化振興基本計画」の策定に取り組みます。
また、市民主体の自主的な文化の創造に向け、行政と文化スポーツ振興財団、登別市文化協会が連携して市民の文化活動を支援できるよう(仮称)「地域文化創造機構」を設立するなど、登別の文化における新たな切り口と連携の仕組みづくりに努めてまいります。
スポーツの振興につきましては、長期的・総合的視点から市が目指す基本的な方向を示す「登別市スポーツ振興基本計画」を策定します。
また、引き続き、文化スポーツ振興財団や市内スポーツ団体と連携し、市民だれもが楽しめるスポーツ事業を展開するとともに、競技スポーツの振興を担う人材の育成・強化に取り組んでまいります。

次に、新市民プールの建設についてであります。
新市民プールの建設計画の策定にあたっては、当初の段階から多くの皆さんの参画を頂き、施設や運営の両面にわたって様々なご意見を頂きましたこと、まずもって、感謝いたします。
 お陰様で、いま、市民の皆さんが最も望んでおられる「水の効能」を最大限に生かした健康増進施設として、また、水泳普及の拠点施設として、さらには、児童生徒の水泳授業の中心施設として登別にふさわしい「健康創造文化」を提案できる施設計画を作り上げることができました。
平成十六年五月の供用開始を目指すとともに、開館後の展開を視野に市長部局と連携しながら健康増進を目指したさまざまな水中運動法の開発と運営のあり方について検討をすすめてまいります。

社会教育施設についてでありますが、

郷土資料館は、これまで支援団体SLGの協力のもと進めていた収蔵資料の整理を終えましたので、これを機に三階展望室を新たに資料の展示・収蔵及び特別展などを実施する空間として活用してまいります。

「ふぉれすと鉱山」につきましては、昨年四月の開館以来道内でも類のない自然体験型の宿泊学習施設として多くの皆さんにご利用いただきました。
今後は、「総合的な学習」にも対応できる学校向けの学習内容や手法の開発に取り組むなど、より充実した自然学習・体験ができる施設となるよう工夫し、文字通り「人と自然とのふれあい拠点」として活用されるよう努めてまいります。

図書館につきましては、本年、旧温泉科学館が改装されますので、それに合わせて分館的機能の整備に努めます。

最後に、中高一貫校「中等教育学校」の誘致についてでありますが、これまでも市議会及び誘致期成会とともに、北海道や北海道教育委員会に対して要請活動を行ってまいりましたが、北海道では、平成十九年度までのモデル校設置を検討しているところであり、この年度の開設を想定した場合は、今年度、具体的な基本調査等の取り組みが始まるものと理解しております。
今後、さらに要請活動を強め、実現に向け努力してまいります。

以上、平成十五年度の教育行政執行に関する主要な方針について申しあげました。
教育委員会といたしましては、完全学校週五日制や新しい教育課程での実施から二年目を迎えた今年が、そのねらいの実現にむけた重要な年であると捉え、全力をあげて教育行政の推進を図る所存であります。市民の皆さん並びに市議会議員の皆さんのご理解とご協力を心からお願いいたします。

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