教育行政執行方針


 平成十六年第一回定例市議会にあたり教育委員会所管の行政執行に関する主な方針について申し上げます。

 今日、教育を取り巻く情勢は、地方分権や構造改革の流れが加速する中、中教審による「教育基本法」改正の答申や三位一体改革での義務教育費国庫負担制度の見直し論議、構造改革特区による先駆的取り組みなど、様々な要素をはらみながら揺れ動いております。

 一方、子供たちの状況に目を向ければ、頻発する少年事件に加え、依然あとを絶たないいじめ、不登校、さらには目を覆いたくなるような児童虐待などきわめて憂慮すべき状況にあります。

 教育委員会といたしましては、これらの動向を見極めながら、教育に託された重大な使命をいま一度思い起こし、学校、家庭、地域社会が一体となって課題解決に取り組めるよう努めてまいります。

 さて、昨年は、当市の教育・文化・スポーツの将来を展望する上で大きな前進をみた年でありました。

 一つは、平成十一年より市を挙げて誘致に取組んできた「中等教育学校」の立地決定であります。
 まずは、長年にわたって市の誘致活動をご支援いただいた関係の皆様に感謝申し上げます。
 当学校は、北海道が中等教育推進の新たな取り組みとして平成十九年度に道内初のモデル校として開設するものであり、登別の教育の推進にとっても大きな役割を果たすものと確信しております。
 教育委員会といたしましては、市長部局と一体となり、登別にふさわしい中等教育学校となるよう支援してまいります。

 二つは、幼保一元化モデル事業への取り組みであります。
 幼児の家庭状況の違いにより保育の場が区分されている幼稚園と保育所の連携については、かねてより検討を進めてまいりましたが、新たな登別保育所の建設を機に、私立幼稚園協会のご理解とご協力のもと、登別型ともいえる幼保一元化の取り組みへ一歩踏み出したところであります。
 本年、学校法人登別立正学園白雪幼稚園のご協力を得て、モデル事業を展開する運びとなりました。
 今後は、モデル事業での実践を通して、新しい時代の幼稚園教育のあり方を探ることはもとより、安定的で質の高い幼児教育が展開されるよう図ってまいります。

 三つは、新市民プールの建設であります。
 新市民プール建設事業につきましては、温水を活かした「健康創造文化」を市民に提供することを基本コンセプトに保健・医療・福祉あるいは体育などの関係団体や健康づくり運動の専門家のご協力を得ながら、本年六月一日の開館を目指して建設を進めております。
 運営にあたりましては、単に教育委員会の所管するスポーツ施設という範疇ではなく、幼児からお年寄りまで幅広い市民の皆さんの健康増進施設として、市内の医療や保健関係者のご協力を得るとともに横断的な行政運営により市民の健康づくりの拠点施設となるよう努めてまいります。

 次に、新年度の主な取り組みについて申し上げます。

 まず、学校教育についてであります。
 子供達の「生きる力」の育成を目指して実施に移された新学習指導要領が三年目を迎えた本年、国においては、その定着と「ねらい」の一層の実現を図るため新学習指導要領の一部改正を行いましたので、その趣旨が徹底されるよう図ってまいります。
 とりわけ、児童生徒の学ぶ意欲を重視し、知識・技能に加え、思考力・判断力・表現力など「確かな学力」を定着させることが強く求められております。
 このため、各学校では、各教科・領域等における学習目標に即して、確かな学力が定着するよう、指導の手立てを工夫するなど「指導と評価の一体化」に努めておりますが、さらに、子供たちの学習の定着状況を総合的に把握するため、各学校が実施する標準学力検査を支援し、その結果が指導に生かされるよう図ってまいります。

 また、学力の向上を図るための指導方法や指導内容について先進的に研究を行うため、文部科学省が指定する「学力向上フロンティア」や「国語力向上モデル」を富岸小学校及び幌別小学校で取り組むほか、少人数加配制度を積極的に活用し、子ども一人ひとりの理解や習熟の程度に応じたきめ細かな指導ができるよう支援するとともに、研修内容や教育課程の実践に関わる教育研究機能の充実を目指してまいります。
 教員の資質向上についてでありますが、学校が保護者や地域の期待と信頼に応えるためには、学校経営の最高責任者たる校長のリーダーシップはもとより、教員の資質や能力の向上が不可欠であります。
 このため引き続き北海道教育委員会、北海道立教育研究所等が実施する研修に積極的に派遣するとともに、自主的・主体的な研修・研究の取組を奨励してまいります。

 「総合的な学習の時間」につきましては、これまでの実践を検証するとともに、学習の目標や内容を明確にしながら、地域の自然や産業経済、人材等、登別ならではの教育資源を活かした展開が進められるよう図ってまいります。

 学校図書館につきましては、本年度、新たに中学校に指導員を配置し、司書教諭の指導のもと、図書のデータベース化に取組みます。
 また、小学校学校図書館につきましては、図書館の基盤整備が整いましたので、本年度から図書ボランティアの導入を進めてまいります。

 学校の安全確保についてでありますが、最近は、学校の安全を脅かす、想像を絶するような事件が相次いでおります。
 当市におきましても、緊張感をもって安全確保の態勢充実に努めているところでありますが、なお一層実効性を高めるため「学校の安全管理に関する指針」を作成するとともに、各校における具体的な危機管理マニュアルづくりを進めます。

 また、不審者・変質者対策についてでありますが、昨年秋口より市内各所で不審者による子どもを狙った事件が多発いたしました。
 教育委員会では、「子どもを守る緊急地域連絡会議」を開催し、連絡監視体制の整備を図るとともに、各学校に携帯用の防犯ブザーを配布するなど当面の対策を講じましたが、何よりも効果的だったのは、市内各地域でPTAや町内会などが中心となり、自発的に子供達を守る監視活動やパトロールに取組んで下さったことであります。改めてそのご努力に感謝を申し上げます。
 本年も引き続き地域の皆さんと連携し、子どもの安全確保のために万全を期してまいります。

 学校施設整備についてでありますが、本年は、引き続き若草小学校の大規模改造第二期工事をはじめ、幌別西小学校の受水槽室の給水装置改修、幌別東小学校の駐車場整備などをすすめ、適切な維持管理に努めてまいります。
 
 次は、社会教育についてであります。

 社会教育活動の展開にあたりましては、これまでも広範な市民の学習ニーズを受け止めるとともに、時代や社会状況の変化に柔軟に対応できる学習機会と場の構築に努めてまいりましたが、本年は、市民一人ひとりの学習をよりきめ細かく支援するため「人材バンク」などの生涯学習関連情報の充実に努めてまいります。
 また、引き続き「マイプラン講座」や「ときめき大学」「婦人短期大学」などの学習内容を充実するとともに、学んだ成果や豊かな体験・知識が地域やまちづくりに活かされるよう働きかけてまいります。
 家庭教育についてでありますが、家庭は、基本的な生活習慣、家族や他人に対する思いやり、善悪の判断や社会的マナー、さらには、望ましい食習慣の形成など、すべての教育の出発点であります。
 家庭がその機能を十分に発揮するためには、親自らが、友人や地域、高齢者などとの交流の中から子育てや幼児教育について学ぶことが必要であります。
 このため、「家庭教育学級」の充実を図るとともに、新たに子どもの教育に関する参考図書やビデオを収集した「家庭教育ライブラリー」を開設いたします。

 次に、青少年の健全育成についてであります。
 今日、青少年の状況に目を向けたとき、ボランティア活動や国際貢献などに取組む青少年が増加する一方、凶悪な事件の増加、無自覚な消費行動、社会的マナーの欠如、ひきこもりなど様々な問題が深刻化するとともに新たな問題として若者の社会的自立の遅れが指摘されています。
 教育委員会といたしましては、様々な学習機会や青少年の交流機会と場をとらえてこの地に根を張った青少年活動が展開されるよう、まずは、市内の青少年活動を担う人材の育成を根気強く進めてまいりたいと考えております。

 青少年の非行問題については、犯罪の低年齢化・広域化が進む一方、凶悪・粗暴といった重大な問題行動を起こす事例が増加しております。
 学校・家庭・地域が密接な連携のもと、青少年の非行防止に向けての取組みを進めることが必要であります。
 このため、青少年補導センターの活動の充実を図るとともに、「大型店等万引防止連絡会議」や「生徒指導担当者会議」等との連携を深めてまいります。

 文化・スポーツの振興についてでありますが、
 昨年から、関係団体や市民の皆さんの参画を得て、新たな時代にふさわしい文化・スポーツ振興のためのガイドポストづくりに取り組んでおります。
 文化振興計画にあっては、市民の皆さんが自主的・主体的にふるさとの文化創造に関わり、文化活動や文化を育む環境づくりがどうあるべきなのか、また、スポーツ振興計画にあっては、生涯スポーツ振興の観点から各スポーツ団体において計画のフレームづくりなど論議を進めております。
 今後は、これらの論議を受けとめるとともに、参加されている皆さんと協働して、十六年年度中に成案を得たいと考えております。

 ふぉれすと鉱山についてでありますが、
 本年は、開設三年目を迎えましたので、これまでの活動を検証するとともに、一層「人と自然のふれあい拠点」として市民の皆さんに活用していただけるよう努めてまいります。
 また、国有林の一部を活用して、自然とのふれあいを通した体験学習など、新たなプログラムづくりを進めるとともに、本年度から、北海道によるネイチャーセンター周辺の保安林整備事業がスタートいたしますので、整備内容について地元の意見が反映されるよう図ってまいります。

 以上、平成十六年度の教育行政執行に関する主要な方針について申し上げました。市民の皆さん並びに市議会議員の皆さんのご理解とご協力を心からお願いいたします。


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