僕の誇り
登別中学校
3年 越野 敬太
「勉強だけなら塾でも良いのに、どうして学校へ通うのか分かりますか」
ある学活の時間に、担任の先生から突然このような質問をされました。答えの全く浮かばなかった僕は手を挙げることができませんでした。それ以前に、
「どうでもいい」
そんな思いが僕を支配していたのです。
その後学校祭の準備が始まりました。僕は合唱コンクールの指揮者とパートリーダーを兼任することになりました。しかし、指揮者とパートリーダーの両立は思った以上に難しいものでした。どちらも辛い役割だったのです。パート練習では、人が集まらない、壁に寄りかかって歌う気がない、全体練習でも歌声ではなく無駄な私語だけが教室に響く。練習の度にクラスはバラバラになっていきました。どうすることもできないクラスの状態と自分の無力さに、いらだちや焦りが僕の中でどんどん膨らんでいきました。
ある朝の合唱練習の時でした。いつものようにやる気の感じられない合唱が響いていました。担任の先生は、一曲歌い終わると、すっと立ち上がり、僕にこう言いました。
「まとめていけないならパートリーダーも、指揮者も辞めていいよ」
その言葉は僕の心を深く突き刺しました。とてもショックでした。耐えきれない程の重圧、自分に対する悔しさ…いろいろなものが心の中を渦巻きました。そして僕は笑顔が出ないくらいどん底にまで落ち込んでいったのです。
気づいたとき、僕は練習真っ最中の中、教室を飛び出していました。全てが嫌になった。何にも考えたくない。指揮者なんかやめてしまいたい。僕は階段に座り込んだまま動くことができませんでした。
連れられて渋々教室に戻った僕の耳に、衝撃の言葉が飛び込んできました。
「敬太が頑張ってくれてるんだから、みんな頑張ろうよ」
認めてくれる人がいる。同じ思いの人がいる。素直に嬉しさを感じました。そしてさらに、「そうだ、ちゃんとやろう」
「オレも頑張る」
次々と耳に飛び込んでくる、みんなの励ましの声。僕の凍りついた心が少しずつ温まっていくのを感じました。
それからクラスの雰囲気も、僕の気もちも大きく変わっていったのです。
合唱コンクール本番では、結局入賞することができませんでした。悔しかったけれど、結果だけが全てではない、もっと素晴らしいものを僕たちは手にしたのです。いつからかクラスのために頑張ることが僕の誇りになっていたことに気が付きました。
今僕は自信を持って先生の質問に答えることができます。学校には仲間がいます。仲間のために頑張ること、みんなで協力し合うこと、みんなで泣いて、みんなで笑うこと、そういう大切な事を学ぶことができる、それが僕たちが学校に通う本当の意味なのではないでしょうか。
大切なことを教えてくれた仲間と先生に感謝しながら、今僕は3年A組というクラスでかけがえのない仲間とともに過ごしています。これからもその大切な時を自分の誇りにしていきます。